退職勧奨の退職は会社都合!自己都合退職の違いを徹底解説

公開日: 2024.11.09

退職勧奨による退職が「会社都合退職」になることをご存知でしょうか?

会社都合退職となることで、失業保険の条件や退職金の金額などが変わります。それだけでなく、会社の助成金の受給条件や社員の転職活動にも影響を与えます。

退職勧奨による離職であるにもかかわらず、離職票の自己都合退職の欄にチェックを入れてしまうと、退職後に元社員から異議の申し出を受け、トラブルを招きます。退職時に会社都合退職とするのか、自己都合退職とするのかを確認し、合意書などの書面に明確に記載をしておきましょう。

本記事では、退職勧奨による退職がなぜ「会社都合退職」となるのか、その具体的な理由や背景について詳しく解説し、従業員が適切な選択をするためのサポートを提供します。

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退職勧奨とは

退職勧奨とは、企業が従業員に対して退職を促す行為のことを指します。企業が退職勧奨をすること自体は自由ですが、労働者がこれに応じて退職するか否かは、労働者の自由意思によります。そのため、労働者の意思を無視するような態様で勧奨行為が行われた場合には退職強要として違法行為となります。

退職勧奨する目的

退職勧奨の目的は、厳格な解雇規制を避けながら問題社員を円満に退職させることにあります。たとえ問題社員であっても、労働法で定められた解雇の要件を満たさなければ、解雇は無効となり、企業は大きな負担を強いられてしまいます。そのようなリスクを回避するために、退職勧奨により退職を促すことがあります。

その他にも、人件費などの経費を削減することで、経営不振や事業の再編成を行うために退職勧奨が行われることもあります。

退職勧奨と解雇の違い

退職勧奨と解雇は、従業員との労働契約を終了させる点で共通していますが、その終了させる方法に違いがあります。

退職勧奨は、会社が従業員に退職を提案する形であり、従業員が自己の意志で退職することを意味します。

一方、解雇は会社が一方的に従業員との雇用契約を終了させる手続きです。つまり、退職勧奨は、労使間の合意により退職する手続きですが、解雇は労働者の意思に関わらずに契約を終了させる処分になります。

解雇は一方的に契約を終了させる処分であるため、厳格な条件をクリアしなければ無効となるのに対して、退職勧奨による合意退職には原則として解雇のような規制はありません。

以上のような退職勧奨と解雇の違いを理解し、適切な手続きと対応を行うことが重要です。

退職勧奨による退職は会社都合となる

退職勧奨による退職は、会社都合退職として扱われます。

確かに、退職勧奨に基づく退職は、労働者の自主退職または合意退職によるものですから、自己都合退職のような気もします。

しかし、雇用保険法23条2項2号及び雇用保険法施行規則36条9項に「事業主から退職するよう勧奨を受けたこと」を会社都合退職とすることを定めています。

また、会社が労働者に対して退職勧奨をしなければ労働者は退職することはなかったわけですから、たとえ合意退職であったとしても、会社側の都合による退職と考えられます。

試用期間中の退職勧奨も会社都合退職となる

試用期間中の退職勧奨も本採用後の退職勧奨と同様に会社都合退職に該当します。

試用期間中であっても、会社側からの一方的な退職勧奨であることは本採用後の退職勧奨と変わらないからです。また、雇用保険法においても、試用期間中と本採用後とで取り扱いに差を設けていません。

よって、試用期間中であっても、退職勧奨が行われた場合には会社都合退職として取り扱われるため、適切な手続きを踏む必要があります。

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「会社都合退職」と「自己都合退職」の違い

「会社都合退職」と「自己都合退職」との間には様々な違いがあります。これらの違いを説明していきます。

失業保険給付に差が出る

会社都合退職と自己都合退職では、失業保険の給付に差があります。

会社都合退職の場合、受給開始日が早く、失業給付の期間も長くなります。自己都合退職では受給開始までの給付制限期間があり、給付期間も短縮されることがあります。

例えば、会社都合退職であれば、失業給付の受給開始は退職後すぐの7日後で、給付期間も90日から330日と長いです。一方、自己都合退職の場合は、待期期間の7日後に2か月の制限期間があり、給付期間も90日から150日程度に制限されます。

このように、会社都合退職と自己都合退職では失業保険の給付に大きな違いがあるため、退職理由を明確にしておくことが重要です。

退職金の金額や条件が異なる

退職金の金額や条件は、会社都合か自己都合かによって変動する場合があります。

企業の退職金規定の内容にもよりますが、自己都合退職よりも会社都合退職の方が退職金の金額や条件が優遇されていることが多いです。また、退職勧奨に伴う退職の場合、労働者側に合意退職を促すために、通常の退職金に幾分かを上乗せした割増退職金が退職条件として提示することもあります。

ただし、労働者が重大な非違行為を行っている場合には、退職金の一部または全部が不支給とすることもあります。

従業員の再就職に影響する

退職勧奨により退職した場合、従業員の再就職に影響が出ることがあります。

退職勧奨による退職も会社都合の退職となります。退職理由が会社都合退職であることを転職先等が知った場合に、雇入れを躊躇する可能性があるからです。

つまり、転職先は、離職票の記載内容、失業保険の給付日数、労働者本人からの申告によって、前職の退職理由が会社都合退職であることを知る可能性があります。

会社都合退職であれば、労働者側の落ち度により退職に至ったのではないかと邪推されてしまい、その労働者の採用を敬遠してしまうおそれは十分にあります。

助成金の受給が難しくなる

退職勧奨により従業員が退職すると、会社は助成金の受給が難しくなる可能性があります。

雇用関連の助成金は、雇用の安定や労働者の処遇改善を図るために支給されるものです。そのため、企業が会社都合により労働者を退職させることは、雇用関連助成金の制度趣旨に反することになります。

そのため、助成金の受給条件として、一定期間内に会社都合退職をさせた事業主には支給しないといった条件が定められています。

よって、退職勧奨であっても助成金は不支給とされる可能性があるため、退職勧奨の時期等をよく検討した方が良いでしょう。

特定技能外国人の雇用が制限される

退職勧奨による退職は、特定技能外国人の雇用に影響を及ぼす可能性があります。

特定技能外国人とは、一定の専門性や技能を備えた外国人を受け入れることを目的とする在留資格を持つ外国人を指します。

特定技能外国人の受け入れは、人材不足を解消できる点で企業にとって有意な制度です。

しかし、申請から直近1年以内に特定技能外国人と同じ職種の労働者が会社都合退職している場合は、特定技能外国人の雇入をすることができません。また、特別技能外国人を会社都合で退職させる場合、特定技能外国人に対して転職支援を行う必要があります。

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退職勧奨時の注意点とは

退職勧奨を行うことは自由です。しかし、自由といっても限度を超えれば違法な退職勧奨となり、法的な問題を引き起こします。

退職勧奨を行う際には注意点を十分に踏まえながら進めていくことが大切です。

会社都合退職であることを説明する

退職勧奨を受ける際には、会社都合退職であることを明確に説明しておくことが必要です。

退職勧奨による離職も会社都合退職です。それにもかかわらず、社員に対して会社都合退職であることを伏せたり、あるいは、自己都合退職であるかのように説明することは控えなければなりません。なぜなら、会社都合退職となると、社員にとって転職活動に影響が生じる可能性があるからです。

そのため、退職勧奨をする際には、会社都合による退職となることは明確に説明をしておくことが労使間のトラブルを予防となります。

執拗な面談は控える

退職勧奨において執拗な面談は控える必要があります。

これは、あまりに頻繁に面談を行うことが従業員への圧力として受け取られ、不当な圧力と見なされる可能性が高いためです。その結果、退職強要と認定されることで退職が無効となったり、慰謝料請求を受けるリスクもあります。

そのため、長時間や多数回にわたる退職勧奨は控えるべきです。労働者が退職勧奨を明確に拒否するのであれば、執拗に退職勧奨をすることは止めましょう。まあ、退職勧奨を2〜3回しても全く進展がない時も退職勧奨を中断するべきでしょう。

面談時の記録を残しておく

面談時の記録を残しておくことは、後でトラブルを防ぐために非常に重要です。

記録があれば、退職勧奨の過程や話し合いの内容が明確になり、いざという時に証拠として利用できます。例えば、面談時の録音や議事録として残しておくことで、双方の主張が食い違った場合でも客観的に確認することができます。特に、退職強要を主張された場合に、その主張を排斥するための強力な証拠となります。

漫然と退職勧奨をするのではなく、きちんと記録化しておきましょう。

退職合意書を作成する

退職勧奨を行う際は、必ず退職合意書を作成することが重要です。

退職合意書は、退職の合意内容を明確にし、後日のトラブルを防ぐための証拠となります。口頭だけでは、退職の合意内容が曖昧になり、後に紛争が発生する可能性があります。

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退職勧奨で退職する時の離職票

退職勧奨によって退職する際には、離職票を適切に発行することが重要です。離職票は、失業手当の申請や新しい職に就く際の手続きに必要となるため、誤りなく準備することが求められます。

以下に、具体的な手順と注意点を説明します。

離職票とは

離職票とは、雇用保険の被保険者である労働者が退職したことを証明するための書類です。離職票の正式名称は「雇用保険被保険者離職票」と呼ばれます。

離職票と似た書類に離職証明書があります。離職票は、失業給付金を受け取るために、ハローワークが発行する書類です。離職証明書は、離職票を発行してもらうために、企業が作成する書類です。

離職票の発行手続

離職票には、「離職票-1」と「離職票-2」の2種類がありますが、離職票-2に離職理由を記入する欄があり、正確に記入することが求められます。

企業は、従業員が雇用保険の資格を喪失した日の翌日から10日以内に、所轄のハローワークに離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を提出しなくてはなりません。

雇用保険の資格喪失日は退職日の翌日であるため、離職証明書等の提出期限の始期は、「退職日の翌々日」となります。

この期限を超過してしまうと雇用保険法施行規則7条の違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。

離職証明書の記載内容

離職証明書には正確な記載内容が求められます。

離職証明書は離職票の基になる書類ですが、離職票は失業保険の申請や再就職活動において重要な書類であり、不正確な情報が記載されていると手続きが遅れる可能性があるからです。

離職証明書の離職理由欄に離職理由が列記されていますから、該当する理由にチェックを入れます。退職勧奨による退職の場合、『4 事業主からの働きかけによるもの』のうち、『希望退職の募集又は退職勧奨』の①か②にチェックを入れます。

また、離職証明書の「具体的事情記載欄(事業者用)にも記載をすることが必要です。退職勧奨による退職であれば、「退職勧奨による合意退職」と記載するのが一般的です。

退職勧奨と会社都合退職のよくある質問

会社都合なのに自己都合とした時の問題とは?

会社が退職勧奨による退職であるのに、離職証明書に自己都合退職と記載した場合、退職した社員は、失業給付金の受け取りが2〜3か月遅れるため不利になります。

誤って自己都合退職とした場合には、速やかに離職証明書の修正をしましょう。仮に、企業が、助成金の受給の関係で離職証明書の訂正をしなかったとしても、ハローワークが資料に基づき会社都合退職であると判断すれば、会社都合退職として扱うこともあります。

離職証明書を修正することはできるのか?

離職証明書を提出する前に誤記をしてしまった場合には、誤記部分に二本線を引いた上で、正確な記載をしましょう。離職証明書等を提出した後に修正する場合には、「雇用保険被保険者資格取得・喪失等届訂正・取消願」に必要事項を記載し、ハローワークに提出してください。

退職勧奨の問題は難波みなみ法律事務所へ

退職勧奨の問題で悩んでいる企業は、当法律事務所にご相談ください。

退職勧奨は、無計画に行うことは厳禁です。退職勧奨を成功させるためには、専門的な法律知識と経験が必要なため、専門家のサポートを受けることで適切な対策が取れます。

難波みなみ法律事務所では多くの退職勧奨問題を解決した実績があり、それぞれのケースに応じた最適な解決策を提供しています。

不安を抱えるよりも、まずは弁護士に相談し、落ち着いて対策を講じましょう。

退職勧奨にあたっては、あらかじめ弁護士に相談するようにしましょう。

難波みなみ法律事務所では、初回相談30分を無料で実施しています。

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