懲戒処分とは|懲戒処分の種類・流れや厳重注意との違いを弁護士が解説

公開日: 2023.08.10

従業員が会社のルールに違反したときは、その従業員に対して懲戒処分を行うことができます。

しかし、懲戒処分には、さまざまな種類がありますので、従業員の違反行為に応じた適切な処分を選択しなければ、懲戒権の濫用として違法・無効と判断される可能性もあります。

そのため、懲戒処分を行う際には、懲戒処分に関する基本的なルールをしっかりと押さえておくことが大切です。

今回は、従業員への懲戒処分を検討している会社に向けて、懲戒処分の種類や懲戒処分の進め方などについてわかりやすく解説します。

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懲戒処分とは何か

そもそも懲戒処分とはどのような制度なのでしょうか。また、懲戒処分と厳重注意ではどのような違いがあるのでしょうか。以下で詳しく説明します。

懲戒処分の意味

懲戒処分とは、会社の服務規律や業務命令などに違反した労働者に対して科される制裁罰をいいます。

懲戒処分の具体的な内容は、法律には定められていませんので、会社が労働者に対して、懲戒処分を行うためには、根拠となる規定が必要になります。

多くの会社では、就業規則に懲戒処分の根拠となる規定や種類などを定めており、これが根拠規定となります。

また、懲戒処分は、従業員に対する不利益処分となりますので、不相当な処分を科してしまうと懲戒権の濫用として違法・無効と判断されるリスクがありますので注意が必要です。

懲戒処分の目的

懲戒処分は、問題行動を起こした労働者に対して制裁を与えることにより、企業秩序を維持して、円滑な企業活動を行うという目的があります。

すなわち、懲戒処分を受けた労働者は、自らの行いを反省して態度を改めることになります。周囲の労働者に対しても問題行動があったときは厳正に対処する姿勢を示すことで、企業秩序の維持に繋がります。

懲戒処分と厳重注意との違い

懲戒処分と似たものに「厳重注意」というものがあります。

厳重注意とは、懲戒処分を科すまでに至らない程度の問題行動があった労働者に対して行われる注意です。

厳重注意には、行動での注意だけでなく、謝罪文や反省文の提出を求めるものもあります。

厳重注意は、懲戒処分にはあたりませんので、労働者に対しては、具体的な不利益が生じることはありません。あくまでも懲戒処分ではなく、懲戒処分を行う前段階で行うものという位置付けです。

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懲戒処分の種類とレベル

 懲戒処分には、処分のレベル(重さ)が異なるさまざまな種類があります。労働者の問題行動に対して、適切な処分を選択するためにも、懲戒処分の種類とレベルをしっかりと理解しておくことが大切です。

懲戒処分の種類

懲戒処分には、主に、7種類があります。以下では、処分の程度が軽いものから順に説明します。

①戒告

戒告とは、労働者の将来を戒める処分です。

戒告は、労働者に対して口頭で注意を行い、始末書などの提出を伴わない処分であるのが一般的です。

②譴責

譴責とは、戒告と同様に労働者の将来を戒める処分です。

譴責は、戒告では足りない問題行動があった労働者に対して、口頭での注意とともに、始末書の提出を求める処分になります。

③減給

減給とは、労働者が本来受け取るべき賃金から一定額を減額する処分です。

給料の金額は、労働者の生活に直結する問題ですので、労働者保護の観点から、減給処分をする際には法律上、以下のような限度額が設けられています。

・1件の懲戒処分での減給額が平均賃金の1日分の半額を超えないこと

・数件の懲戒処分での減給総額が一賃金支払い期に支払われる賃金総額の10分の1を超えないこと

④出勤停止

出勤停止とは、労働契約を維持しつつ、一定期間労働者の就労を禁止する処分です。

出勤停止期間は、労働者に対して賃金の支払いはなく、勤続年数にも含まれないのが一般的です。

減給のように出勤停止期間について法律上の上限は設けられていませんが、無給期間が長くなれば労働者の不利益も大きくなるため、就業規則などで1週間から1か月程度の期間が定められるのが一般的です。

⑤降格

降格とは、職位、役職、職能資格などを引き下げる処分です。

降格により、職位、役職、職能資格などが引き下げられると、職務手当や役職手当の減額・不支給が伴いますので、一時的な減給処分に比べると重い処分となります。

⑥諭旨解雇

諭旨解雇とは、懲戒解雇に相当する非違行為をした労働者に対して、退職届の提出を求める処分です。

会社からの勧告に従って退職届の提出をした労働者は、退職扱いとなりますが、退職届の提出に応じないときは、次の懲戒解雇となります。

⑦懲戒解雇

懲戒解雇とは、重大な企業秩序違反を理由として、会社が労働者との間の労働契約を一方的に終了させることをいいます。

懲戒解雇は、懲戒処分の中でももっとも重い処分であり、退職金の減額・不支給、解雇予告手当の不支給などを伴うこともあります。

懲戒解雇・諭旨解雇・整理解雇の違い

懲戒解雇と諭旨解雇は、いずれも懲戒処分として行われるという点で共通しますが、懲戒解雇は解雇扱い、諭旨解雇は退職扱いとなるという違いがあります。

他方、整理解雇は、労働者との労働契約を一方的に終了させるという点では、懲戒解雇と共通する点があります。しかし、整理解雇は、経営状態の悪化など会社側の一方的な都合により行われる解雇であり、労働者には一切問題がない状況でなされるという違いがあります。

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懲戒処分の要件と判断の仕方

会社が労働者に懲戒処分を科すことができるといっても、何の制約もなく自由に行うことができるわけではありません。以下では、懲戒処分を科すための要件とその判断基準について説明します。

就業規則に定められた懲戒事由

会社が労働者に懲戒処分を科すためには、懲戒処分を科すための根拠規定が存在していることが必要です。

一般的には、就業規則に懲戒処分の種類、懲戒事由、懲戒処分を行う際の手続きなどが規定されていますので、これらが懲戒処分の根拠規定となります。また、就業規則の規定が有効になるには、所轄の労働基準監督署への届出と労働者への周知が必要です。

判断基準と行為の程度

労働契約法15条では、懲戒処分が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは無効になると定められています。

そのため、懲戒処分を行う会社としては、まずは、労働者の行為が懲戒事由に該当するかどうかを判断します。そして、懲戒事由に該当する場合には、労働者の非違行為の性質・態様、情状、先例との均衡などを考慮して、適切な処分を選択することが重要です。

労働者の非違行為に対して重すぎる処分を科してしまうと、懲戒権の濫用として違法・無効と判断される可能性もありますので注意が必要です。

懲戒処分の進め方

懲戒処分を科す場合には、どのような流れで進めていけばよいのでしょうか。以下では、懲戒処分の進め方と注意点について説明します。

①処分対象の事実確認

労働者による非違行為や問題行動があった場合には、まずは事実関係の確認を行います。後日、労働者から懲戒処分の違法性を争われる可能性もありますので、懲戒事由に該当する事実があるということを客観的に明確にしておくことが大切です。

②弁明の機会の付与

懲戒処分を行うにあたっては、対象となる労働者の言い分(弁明)を聞く機会を設ける必要があります。弁明の機会を設けることなく、懲戒処分を科してしまうと裁判で無効と判断される可能性もありますので注意が必要です。

③懲戒処分の種類の検討

懲戒処分には、戒告から懲戒処分までさまざまな種類があります。労働者の非違行為の程度に比べて重すぎる処分を選択してしまうと、懲戒処分が無効と判断されるリスクが高くなります。そのため、適切な懲戒処分の種類を選択することが大切です。

④懲戒処分通知書の交付

懲戒処分の種類が決まったら、対象となる労働者に対して、懲戒処分の内容およびその理由を記載した懲戒処分通知書を交付します。

懲戒処分と退職金・失業保険の関係

就業規則などで懲戒解雇となった労働者に対して、退職金を支払わないまたは減額するという定めがある場合には、退職金を減額または不支給とすることも認められます。もっとも、退職金には、賃金の後払い的性格や功労報償的性格がありますので、無制限に不支給または減額をすることはできず、これまでの勤続の功を抹消または減殺するほどの著しい背信行為があった場合に限られます。

また、懲戒解雇された労働者であっても失業保険から基本手当の支給を受けることができます。しかし、懲戒解雇は、自己都合退職と同様に扱われますので、会社都合の場合に比べると給付日数などで不利な扱いを受けることになります。

社内での懲戒処分の公表と名誉毀損について

同種事案の再発防止の観点から社内での懲戒処分の公表を検討している企業もあるかもしれません。

しかし、特定の労働者が懲戒処分を受けたという事実を公表することは、当該労働者の社会的評価を低下させるおそれがあるため、名誉毀損に該当する可能性があります。そのため、懲戒処分を社内で公表する際には、処分対象者個人の特定ができない形で公表するなどの工夫が必要になります。

自治体や学校での懲戒処分

 懲戒処分は、民間企業だけではなく、自治体や学校でも行われることがあります。

学校での懲戒処分

学校教育法では、校長および教員は、教育上必要があるときは、児童、生徒、学生に懲戒を加えることができると定められています(学校教育法11条)。そのうち、学校教育法施行規則26条2項では、生徒の教育を受ける地位や権利に変動をもたらす懲戒処分として、以下の3種類を定めています。

  • 退学
  • 停学
  • 訓告

市や自治体での懲戒処分

市や自治体で勤務する公務員も問題行動や非違行為があった場合には懲戒処分の対象となります。国家公務員については国家公務員法82条1項で、地方公務員については地方公務員法29条1項で、以下のような懲戒処分の種類が定められています。

  • 戒告
  • 減給
  • 停職
  • 免職

懲戒処分は慎重に

懲戒処分は、社内秩序を維持して業務効率の低下を避けるために必要な処分です。

社員の問題行為を見て見ぬふりをして放置することは厳禁です。

他方で、感情任せで懲戒処分をしたり、適切な手続を踏むことなく懲戒処分をすることは控えなければなりません。

懲戒処分をするには難しい判断を迫られます。

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