消費者トラブル

企業で起きやすい消費者トラブル

全国の消費者生活センターに寄せられる消費者トラブルの相談件数は、年間約90万件と高い水準で推移しており、どの企業でも消費者トラブルの当事者となるリスクがあることが分かると思います。

引用:令和3年版消費者白書

消費者の相談には、企業が誠実に対応するべき、理由のある苦情もあれば、過剰な要求をしてくるクレームも含まれています。いずれの場合においても、商品やサービスを提供する企業が誤った対応をすると、既存顧客を失うだけでなく、口コミ等を通じて新規顧客の喪失も招きます。
また、消費者との取引は、消費者契約法や特定商取引法などの消費者保護のための法律が適用され、事業者間取引とは異なる対応が求められます。

消費者トラブルの具体的な事例

契約期間中の中途解約した場合の対応(学習塾)

【事案の概要】

学習塾の在籍している学生の保護者から、「塾講師の質が悪い。」と言って、契約期間中に退塾するとの申し入れを受けた上で、既に一括で支払った6か月分の塾月謝代の返還を求められた事案です。消費者との継続的な取引(エステ、学習塾、美容医療等)では、契約期間中のトラブルで中途解約するケースは比較的多いです。

【解説】

このような継続的なサービスを提供する契約類型では、特定商取引法によって既払い金の清算基準が設けられていますので、これに従った返金が余儀なくされますので注意が必要です。
企業側が、特定商取引法に対する知識不足が原因で既払い金の返還に応じないケースはよくありますが、これがきっかけとなって保護者側から厳しく追及されたり、SNS等で悪評を書かれてしまうリスクもありますので、適切な対応を要します。

顧客(保護者)からの執拗な悪質クレーム

【事案の概要】

通信制学校に在籍する生徒の保護者から、「学校のせいで病気になり不登校になった」との苦情が寄せられ、授業料の返還と慰謝料請求を受けた事案。

【当事務所の対応】

当事務所を通じて、学校関係者からの聴き取り調査、保護者からの聴き取り調査及び主治医との面談調査を行い、学校側の対応に問題がないことを確認。
それにもかかわらず、保護者からの昼夜を問わない連絡が止まなかったため、当事務所から、学校の業務に重大な支障が生じており、威力業務妨害に該当する棟の警告文を発送した上で、保護者とのやりとりを教員の代わりに行い、沈静化させる。

【解説】

顧客からのクレームにはいろいろなものがあり、真摯に向き合うものもあれば、毅然とした対応をする必要があるものもあります。ただ、不合理な内容のクレームであったとしても、毅然とした対応の一辺倒ではなく、可能な限り、『傾聴』を心がけ沈静化に努めるべきでしょう。

消費者トラブルを起こさないために必要な対応

クレーム対応のポイントを掴む

グッドマンの法則(参照グッドマンの法則|顧客ロイヤルティ協会 佐藤知恭)というクレーム対応と購買活動に関する研究結果によれば、クレームに対して適切な対応をすれば、顧客のロイヤリティ(忠誠度)が上昇し、再購入・再利用に繋がるとされています(要は顧客にファンになってもらうことで、継続購買に繋げていくということです。)。

クレーム対応を適切に行うことも当然重要ですが、顧客が抱いているクレームを吐き出すための施作を講じる必要もまた重要ということです。

マニュアルの策定

理由のあるクレームとハラスメントである過剰なクレームとの境界は非常に曖昧です。そこで、企業において、業界団体が策定した判断基準やマニュアルを利用したり、これがない場合には類似する業界団体のマニュアルを利用したり、あるいは、会社内で独自のマニュアルを作成しこれを利用することで、カスタマーハラスメントに対する統一的な判断と対応を行えるようにします。カスハラに対する対応を全社的に浸透させるため、定期的な社内研修やロールプレイングを実施するなどして、これらマニュアルを社内に周知させ、その運用を徹底するよう教育を実施します。

担当部署の創設

従業員に対して過度の負担を避けるためにも、クレームの対応は従業員一人ではなく、専門部員等を含めた複数人で組織として対応しなければなりません。
組織構成や人員の余力にもよりますが、クレームやハラスメントに対する効率的な対応を図るために、クレーム対応の専門部署を設置するよう努めてください。

クレーム対応後の従業員へのケア

理不尽なクレームやハラスメントの対応を長時間にわたって強いられると、重大な心身のダメージを受け、うつ病等の疾患を発症させる従業員もいます。従業員に対する安全配慮義務を負っている企業は、クレーム対応を行った従業員に対して、手厚い心身のケアを行うことが求められます。例えば、従業員向けの相談窓口を設置したり、産業医や専門医の診察を促す、特別休暇を取らせるなどし、従業員の心身に対する適切な配慮をします。

当事務所でサポートできること

当事務所では、消費者トラブルに関する企業で必要な対応を行っていくうえでの体制構築に向けたトータルサポートが可能です。

  • マニュアル策定研修の実施
  • 相談窓口によるサポート対応
  • 不当な金銭請求への対応

従業員向けのマニュアル策定・研修の実施

従業員の方の負担を少しでも軽減ができるよう、業界内・社内で発生しやすいクレーム内容について整理をしたうえで従業員向けのマニュアル策定をサポートいたします。また具体的な対応方法について研修等を通じて、実際の対応をレクチャーさせていただくことも可能です。

カスハラ相談窓口・従業員の相談窓口の受託

従業員対応によって精神的な負担が大きかったり、対応方法に困っていたりする従業員の方向けに当事務所が相談窓口となって相談対応を行います。社内で担当者育成を検討されている企業様でも、担当者様の最適な対応方法について顧問弁護士としてサポートをさせていただきます。

顧客からの不当な金銭請求等の法律問題

顧客からのハラスメントに近い不当な金銭請求への対応も可能です。社内での対応では解決に運びづらく判断がしづらいこともありますので、第三者である専門家に相談をしたうえで最適な対応方法をご提案いたします。


現代社会では、顧客対応は会社の将来を左右させるほどのインパクトがありますので、適切な対応が重要です。お悩みがあれば、お気軽にご相談ください。