ADR・労働審判

ADR・労働審判の概要

労働問題に関する手続は、裁判外の交渉、訴訟・労働審判、ADR手続といったように、異なる特色を持った手続が複数存在します。その中でも、中小企業を中心に対応をさせていただくケースが多いADRと労働審判に関して解説をいたします。

ADRとは

ADRとは、裁判外紛争解決手続のことを言います。その名のとおり裁判手続ではありません。
ADRには、都道府県労働局の紛争調停委員会によるあっせん、都道府県労働委員会によるあっせん、弁護士会のあっせん・仲裁制度といった紛争解決手続も存在しますが、利用される手続は労働局のあっせん手続が最も多い状況です。以下では労働局のあっせん手続について、説明します。

あっせん手続は、労働者によって、解雇や賃金に関する労働問題に関する申請がなされることで開始され、労働局が選任した紛争調整委員会の仲介によって労働問題に関する話し合いを行い和解を目指すものです。ただし、企業があっせんの不参加の意思を表明した場合には、その時点であっせん手続は打ち切りとなります。
あっせん手続の申立費用が無料となり、また、手続が迅速です(あっせんの開催は原則1回で、申請から終了までが2ヶ月程となります。)。

労働審判とは

解雇や残業代請求などの労働問題を労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名が審理する裁判所における手続きです。
労働審判は、原則として3回の期日で解決するための制度です。この3回の期日内で、裁判所は解決のための和解を促し、話し合いによる解決 に至らない場合には、審判委員会が紛争の実情に応じた審判を出します。審判を受けた日から2週間以内に異議の申立てをしなければ、労働審判は確定し、裁判上の和解と同一の効力を有することになります(労働審判法21条4項)。

労働審判は、あっせんほど早くはありませんが、訴訟よりも断然早期の解決が期待できます。費用に関しても、無料ではありませんが、訴訟の半分の手数料で申立ができ、利用しやすい手続といえます。

労働審判・労働訴訟に発展するリスク

労働問題には不当解雇、残業代、ハラスメントなどの問題がありますが、中でも不当解雇や残業代の問題は、労働審判や労働訴訟になりやすい分野です。労働審判や労働訴訟に発展をしてしまうと下記のようなリスクが企業側にも発生するため、各事案に対してどのような対応が最も効率的かどうかを見極めて選択をしていくことが重要です。

時間的な負担

労働訴訟の解決までの期間は1年以上となることが多く、裁判上の和解が成立せずに判決手続まで進むと、控訴や上告まで進むことが多く、より一層解決までの時間を要します。労働審判であれば、訴訟ほど時間を要しませんが、2か月から3か月ほどの時間が必要となります。ただ、労働審判による解決ができない場合には、訴訟に移行することになりますから、時間的な負担は増えることになります。

経済的な負担

このような時間的な負担だけでなく、解雇処分が無効となれば、解雇から解決時までの給与相当額や解決金の支払いを余儀なくされます。また、残業代請求の問題でも、2年あるいは3年分の残業代に加えて、これと同額の付加金の負担を強いられることもあります。
さらに、訴訟に対応するための弁護士費用も必要となります。

レピュテーション(企業の評判)リスク

労働問題が労働審判や訴訟にまで発展すると、労働者やその関係者がSNSや掲示板を通じて企業の悪評を発信することがあります。一旦、このような情報発信がなされると、これら全ての情報を完全に削除することは困難となります。企業の評判を毀損する情報がインターネット上で残り続けることで、新たな人材の確保や新規の取引が困難となることがあります。

発展させないために企業が注意すべき点

労働審判や訴訟に発展するケースのほとんどは不当解雇やこれを起点とした残業代の請求の問題です。そのため、解雇や退職に際して、紛争に発展しないよう慎重な対応が求められます。まず、労働審判や訴訟に発展しないためにも、解雇処分は回避します。退職勧奨を行い、労働者が十分に納得の上で自主退職をしてもらいます。退職勧奨をする際には、できる限り時間的なゆとりをもって行うように心がけます。退職時には必ず退職合意書を作成します。

当事務所でサポートできること

当事務所では上記のような労働審判や訴訟に発展しないよう、解雇や退職勧奨時のシミュレーション、業務日報の作成指導といったサポートをさせていただきます。万一、労働審判や訴訟に発展した場合でも、手厚いサポートをさせて頂きます。

  • 業務日報の作成サポート
  • 退職勧奨サポート
  • 労働審判・訴訟サポート

業務日報の作成サポート

問題社員の改善に向けた業務日報の作成についてサポートいたします。どのような事項を記載してもらうかも、退職勧奨や懲戒処分を行う際にも重要な証拠となりますので、ポイントを抑えた業務日報をご提案いたします。

退職勧奨実施に向けたサポート

自社で退職勧奨を実施する際に、対応方法については様々な対応が必要です。アプローチの仕方では問題社員に有利となってしまう場合もあります。当事務所ではそのようなリスクをなくすために退職勧奨のシミュレーションの実施や面談時の同席等、退職勧奨を行う場合のサポートを行います。

労働審判・労働訴訟へのサポート

労働審判・労働訴訟に発展してしまった場合であっても、手続き方法の選択や証拠の収集に関するアドバイスを実施させていただきます。申し立てや訴訟の提起の前から弁護士に相談をしていただくことで、その後のサポートもスムーズに対応することが可能です。


労働問題に関する解決方法は様々です。状況に合わせて最適な解決方法も異なりますので、労働問題に関するご相談は早期に弁護士にお話ください。お困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。